アサガオは夜を識らない。

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評価:B
ハッピーエンドのカタチは1つじゃない

■作品の基本情報 (敬称略)
発売:2021年7月30日
メーカー:MELLOW
シナリオ:垂花、夏見晴
原画:まうめん

■キャスト(敬称略)
緋色 アサガオ・・・・・・小波すず
烏羽 小鳥・・・・・・・・和央きりか
皇白 みこ・・・・・・・・蒼乃むすび
金月 緑華・・・・・・・・友利せつな

8月は新作購入が今のところないので、なんとかプレイ済みの過去作品も順次レビューしていきたい。そんなレビュー待ち作品が大渋滞を起こしている状況ですが、今回は2021年7月発売作品からピックアップです。

見ましたか?このキービジュアルを。これだけでもう気になりますよね?
そしてタイトル。キービジュアルと合わせてみたらもう一体どうなってしまうのか、気になってしょうがないですよね?少なくとも私はそうでした。ヒロイン勢のCVは実力派揃いだけど、でも垂花先生の作品って何かやったことあったかなと思って調べたら、閃鋼のクラリアスにサブライターとして参加しているとのこと。う~ん、、どこかわからないから判断できないけど、フルプライスでもないしまぁいいかの精神で予約しました。
フルプライスではないっていう部分はおそらく作品のクオリティに大分影響していたと思います。要所要所でもっと予算があって丁寧に仕上げてたらさらによくなったんじゃないかという部分が出てきます。でもこの作品、嫌いじゃありません。いや、むしろ最近私がプレイしている作品の中では希少な部類と言えるでしょうし、良いですよ!!
体験版をやらずに後悔をすることも多い私ですが、今回はあたりを引きました!!

というわけで、これ以上は作品のネタばれなしには語れそうもないのでいつもの感想に行きたいと思います。ネタバレしたくない人は例によってブラウザバックなりで自己防衛していただけますようお願いいたします。



シナリオ
特殊な環境の中で、徐々に明らかになる状況と取り戻される主人公の記憶。3寮の面々とアサガオの秘密。オープニングを2回挟みながら進んでいく物語は、そこまで飛びぬけて珍しい話というわけではありません。ただそこに声優さんの演技が加わり、見えてくるものの重さと結末への期待が相まってすごくハラハラさせてくれます。ちなみにその期待はいい意味だけではなく、もしありがちな結末に落ち着いたらどうしようという不安も内包しています。物語は価格相応にややコンパクトながら大筋ではいいんですけど、これもミドルプライスの弊害なのか元々そういう風にしか表現できない方なのかはわからないんですが、途中で起きる事件があっさり進みすぎる感じはあります。これはテキストのせいだけではなく、その事件に関わるモブにボイスがついていないからというもの影響していると思います。そう、この作品、上で挙げた4人ともう一人立ち絵のある男性キャラクターにボイスがついているだけで、フルボイスじゃないんですよね。その割に舞台と物語の性質上結構な数のキャラクターが出てくるんですが、そのすべてが立ち絵なしボイスなしです。物語の中である問題が発生して色んな人が関わってくるのに半分以上がボイスなしで進むものですから、ちょっとわかりづらい部分はありますし、ボイスがないところは進め方も微妙に変わるし、声がある部分は役者さんの熱演があるだけに余計に温度差感じちゃうんですよね。。全部が音声なしだったら違和感ないのかもしれないですけど、作品としてみるとう~ん、、、とはなります。
ただまぁ、それでも私がこの作品をおススメの「B」評価にしたのは、結末を妥協しなかったからです。
本作のタイトル「アサガオは夜(アイ)を識らない。」とはヒロインアサガオは愛するものの死を望んでしまう性質の持ち主でありながら、その愛(死)を遂げたことがないことを指します。社会通念上許されない行為であるこの愛を、主人公の碧依はどう受け止めるのか、物語の結末は・・・。

尚、本作品はヒロイン毎のルートはなくて、「ほぼ」一本道です。分岐もありますが、私としてはプレイヤーが本当に望んだ結末だけを見るっていうのもありだと思います。

■CG
半分よりやや多いのがエッチシーンのCGです。キャラクターは可愛いですし1枚絵もいいんですけど、手( 特に指 ) が所々おかしいのが少し気になりました。他の作品の時もキャラクターは可愛いのに手が変な方がいらっしゃったので、きっと手、特に何かを握っている感じは難しいんだろうなぁとは思うんですけど頑張ってほしいです。
そしてもう1点気になるのは主人公です。私は顔がない無個性主人公的な表現がそもそも好きではないんですが、それにしたってなんでこんな中途半端な色黒でしかも髪型それなの?って大分言いたい。他のキャラクターと一緒に映った時に存在が気にならないようにするならまだわかりますけど、他のキャラクターと違いすぎて悪い意味で存在が強調されるのは一体何が目的なのかと問いたくなります。

気を取り直しておススメCGを紹介すると、夕方の屋上でアサガオが上目遣いで服を軽く引っ張っているシーンです。これは可愛い!!幼さを感じさせる表情に上目遣い!!でもしっかり女の子!!優勝です!!
そしてもう一つのおススメはエチチなシーンから、みこが全裸で上になっている時の重力に引っ張られているお乳とガニ股でまたがっている足。エロス!!

■キャラクター
いや~、蒼乃むすびさんと小波すずさんは鉄板ですね。芝居の幅が広い。そしてエロスもこなせるんだから脱帽です。アサガオはメインヒロインだし間違いなく好きなんですけど、今回は小鳥とみこも相当よかったです。シナリオでも書いた通り、ほぼ一本道でヒロイン毎のルートがないんですが、人物の掘り下げと関係性を深めるためかな?小鳥とみこにスポットが当たる場面もあるんですが、それぞれ味があって良きです。ただちょっと問題があっさり解決しすぎな気もするんですが、本筋ではないのでさらっと流します。
本項では本当はサブキャラにもモブキャラにも一言くらい言及したいんですけど、ボイスのないモブってやっぱり空気になりがちですよね。割と出番ある双子姉妹とか、もう漢字すら忘れましたけど理事長の駒の人とか、正直立ち絵と声欲しかったくらいなんですが、その存在感のなさは主人公碧依からみたらそんな扱いっていう見方もできなくはないですね。一方立ち絵も声もある緑華先生は中々よかったです。CV. 友利せつなさんというのは私は初めてお見掛けする方なのですが、他のキャラクターの演技も聞いてみたいと思いました。もう一人、立ち絵のある男キャラクターもいるんですが、まぁ男なんでスルーしてヒロイン毎に見ていきましょう。

◇小鳥
小鳥のよさはさっぱりしているところでしょう。この舞台にいる少年少女はみんな問題を抱えているので、自己主張ができる立場にないっていうのが根底にあるんですが、それでも自分の気持ちを明るく表現して、でも押し付けないでそばにいるスタンスを取っている小鳥はとても好感が持てます。そのさっぱりした役に和央きりかさんがぴたりとはまっているのでとても清々しいキャラクターになっています。

◇みこ
うん。まぁぶっちゃけエロいです。その儚げな声や立ち居振る舞いに反して作中最胸を誇りますし、大分積極的です。みこに押し倒されている時が私と碧依の意思が最も乖離した瞬間でしょう。もうみこと爛れた生活を送ろうよ。

◇アサガオ
CV.小波すずさんでこのキャラクターは反則でしょ。シナリオでも触れた通り愛する人の死を望んでしまうキャラクターで、作中ではタナトフィリアとされています。そして作中現在ではその1年前にあったある事故から幼児返りのような状態で、純粋な子供ものような振る舞いをしているんですが、これを小波すずさんにやってもらうのはずるい。
もう可愛くなるに決まってますからね。純粋だからこそ愛する人の死を望んでしまう様に不自然さがないんですけど、ただ無邪気に振舞っているだけだとそれはそれで違和感覚えそうなんですが、そんな彼女だからこその葛藤もすごく上手く表現されています。
幼児返りがなくなり、成長した時の彼女は必見です。

■エロス
アサガオ5回、小鳥4回、みこ4回です。ほぼ一本道なのでまぁそういうことです。
で、エロいはエロいんですけど、話の長さに反して結構な割合で入ってくる上に各シーンで毎回口でして挿入してで3回とかするからすごくテンポが悪くなります。他の作品でも同じこと思うんですけど、無理にシーンの回数と内容を揃えようとしないでほしいです。いい歳した男女の気持ちが盛り上がったのにしないっていうのは不自然に思うことがあるので、必要なのにないっていうのは違うと思いますし折角あるならエロくしてほしいんですけど、だからと言って不自然に突入しないでほしいんですよね。監視されてても不思議じゃない施設・立場、人がいつ来てもおかしくないくらいの箱庭なのに何も考えずに庭でおっぱじめすぎだろーがよー。
本作が多分初めてなんじゃと思うくらいにエロシーンにイラっとしました。

ただ、まぁ、みこはエロいからね!無意味に耳を澄ませて部屋の外の状況とか確認しちゃったけど、それはしょうがないよね!

■ボリューム
一部の分岐を含めても全体で9時間くらいでした。ミドルプライですのでこんなものでしょう。一つ、非常に不便だったのがセーブデータにUI上は時間の表記がなく年月日しか表示されないのはプレイ時間計算するのに困りました。

クオリティ
機能面では最低限そろっています。バックログからのシーンバックもありますし、キャラ別の音量設定もあります。ただ音量変更したい時にテストで音を鳴らせないのはちょっと不親切です。そして、キャラ別の音量設定で立ち絵のある男キャラがその他で表現されているのは笑います。5人しかいない立ち絵キャラで4人の女性キャラは全員立ち絵が表示されているのに、その他扱いで立ち絵も表示されてないとかいくらなんでも酷すぎて面白い。また、機能としては射精カウンターもあるんですが、この作品はエロ売りなの? 個人的にはまぁエロいと思うこともそれなりにありましたがけど、シーン数の割に展開がワンパターンだったし、シナリオの途中で割り込みすぎな気がしてあんまりいい印象はないです。
セリフ中の表情変化もあるので私が最低限欲しい機能と動きはしているんですが、重要な話に絡んでくるモブが結構多いのにフルボイスじゃないっていうのはやっぱりちょっと作品としてのクオリティを下げていると感じました。

見返すとCGの部分でもエロスの部分でも評価の割に結構不満書いているんですが、この作品のよさはタイトル・テーマに妥協しなかったエンディングにあると思います。多少ご都合でも大団円が好きな私としてはめずらしいんですが、それでも通してほしい筋はありますし、この形こそハッピーエンドと思える本作が私は好きです。

最近萌えゲーには飽きてきたという方、コンパクトな良作をお求めの方、界隈では少数派の結末に興味をもった方にはおススメです。

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