評価:C
こんなに説明多かったっけ?
■作品の基本情報 (敬称略)
発売:2021年3月26日
メーカー:インレ
シナリオ:葉山こよーて
原画:ひっさつくん、ぬい
■キャスト(敬称略)
桶代 紫都香・・・・・・・水多まり
叶納 楼子・・・・・・・・歩サラ
武蔵坊 弁慶・・・・・・・手塚りょうこ
伊勢 三郎・・・・・・・・あじ秋刀魚
佐藤 継信・・・・・・・・早乙女綾
佐藤 忠信・・・・・・・・桃山いおん
平 教経・・・・・・・・・沢澤砂羽
平 宗盛・・・・・・・・・北都南
平 知盛・・・・・・・・・夏野こおり
日々の忙しさにかまけ、気づけば何も更新しないまま5月も終わり6月になってしまった今日この頃です。更新頻度を決めないままだとこの先ダラダラいきそうだと思いましたので、最低2週間に1本、できれば1週間に1本のペースで更新することを決めました。今決めました。
さて、そんな久しぶりの更新は前回に続きまして3月の期待作その2です。 2月も期待作の記事を1部飛ばし、さらにはもう6月ですが3月の期待作その2です、はい。
その作品はこちら、インレ「源平繚乱絵巻 -GIKEI-」です。
インレの作品と言えば私の印象では歴史・大作・立ち絵が多くて良く動く、です。とは申しましてもインレの作品は「ChuSingura46+1 」とそのファンディスク「ChuSingura46+1 武士の鼓動」しかプレイしていないのですが、「ChuSingura46+1」をプレイした時は大河ドラマも真っ青の感動歴史巨編に度肝を抜かれ、夢中でプレイしたのを覚えております。
本作はそんなインレの歴史物としては3作品目であり、メーカーとしては5作目です。歴史物としては「ChuSingura46+1」の後に新選組にまつわる「幕末 尽忠報国烈士伝 MIBURO」( 以下MIBURO ) を挟んだ後の3作目となるようです。 ( 他歴史ものではない作品が1つございます。)
私は前述の通りMIBUROはプレイしていないので、ほぼ ChuSingura46+1 とそのFDに近いイメージをしており、発表後早々に予約を決めるほどの期待作でした。
1つ懸念があるとすれば、プレイしていなかった MIBURO の評判がChuSingura46+1 程ではなかったことですが、評価は人それぞれですし仮に良くなかったとしても今回がどうなるかはわかりません。そんな期待に満ちた本作の感想をいつもの通りいってみたいと思います。今回もネタバレがございますので、気になる方は回れ右でお願いします。
■シナリオ
早速ネタバレしますが、本作は ChuSingura46+1 と同じく主人公が過去にタイムスリップし尚且つ同じ期間をある程度ループします。タイムスリップ・ループものではこの理由を説明するのかしないのかでまずはで大きく分かれると思いますが、本作は物語が進むとある時点でなんとなく説明があります。これがよくなかったんですが、説明しないでもなく、空想設定で説明しきるでもなく、一部をふんわり説明するんです。私はどちらかというと理屈っぽいほうであると思いますが、考察班みたく微に入り細を穿つようなことはしません。でもこの部分、この後に書く他の部分の感想と合わせると非常によくない結果が導かれます。
話を戻します。
まぁタイムスリップについては序盤では説明がないので気にせず物語を読み進めていきますが、早速気になる部分がでてきました。この人達、タイムスリップに対して物分かり良すぎませんか?
物語の導入として現代でちょっと主人公の周辺が紹介されたら早々にタイムスリップするのですが、このタイムスリップに対してやけに物分かりがいいというか、主人公たちのリアクションがあっさりしすぎている気がしました。物語に没入するためにも、もっと主人公たちの焦燥とか緊張感を感じたかったんですが、既定路線かのように淡々と進む様に少し首を傾げます。終わった後に振り返ると、これって本作全体で感じられることだったんですが、なんていうか物語の為に動いている感が凄いんですよね。例えば主人公の世志常が兄に似ているからという理由でやたらと頼朝を妄信する場面があるんですが、これがすごくイライラする。はっきり言ってそうしないと話が予定通り転がらないだけで、そこまでする理由ありませんよねってレベルで妄信してて怖いです。さらに物語のための物語を象徴するような設定に、時間の流れが都合よすぎるというものがあります。主人公達は史実の義経等の実在の人物に成り代わるような立場で話が進むのですが、本当に史実通りに話が進むとイベントは年単位ですし、移動だけでも月単位です。源氏陣営と平氏陣営に別れてしまった世志常と楼子の兄妹が再び出会おうとしたら何年もかかりますし、そんな長い時間にさらされた主人公達現代人組を描ききれないと思ったんでしょうかね? 何故か主人公達に都合のいいところだけ時間の流れが緩やかになり、それ以外の部分では超速で時間が進む謎時空が発生します。
もうね、???ですよ。現代人組と現地人組の間で話のつじつまどうなってるの?例えば世志常と頼朝が会話してたら普通の時間の流れなのは当然でしょう。でもね、一週間もしたら季節が変わってたりするわけですよ。何を言っているかわからないと思いますが、私も何をされたのかわからないってやつですよ。他にも気になるところはアレコレありますが、もはや気にしたら負けです。他に目を向けましょう。
と言いつつ、またダメなところに目を向けてしまうのですが、本作はとにかくテンポが悪い。
シナリオの3分の1は歴史の授業かってくらいやたらと説明が入ります。史実をなぞるから知ってたほうがいいのかもしれないけど、それにしたってってレベルで説明されまくります。歴史だけじゃなくて語源まで説明しだした時には思わず「Hey Siri」って言いたくなるレベル。ChuSingura46+1 ってこんなに説明してなかったよね?
そして世志常が話を転がすのに都合がよいように動かされるからか、とにかく頭のおかしい奴になってます。前述の頼朝の件然り、仲間の助言とか全く聞こうとしないし、大した実力もないくせにやけに強気ですし、仲間になった連中が軒並み絶賛しますが宗教家と狂信者みたいでまるでなろう小説です。
そんな世志常君も歴史の流れに逆らえなくて、どんどん仲間を失って追い詰められる部分は、役者さんの熱演もあり心に迫るものがあります。
ついには世志常自身も力尽きてしまって、無念と悲しの中ループが発動。ループ物で一番面白いのはやっぱり知っている流れを変えようと奮闘し、変わる歴史を見るところでですよね!今まで色々鬱憤溜まりましたが、ここからようやく面白くなりますよ!!
まぁ相変わらず世志常は頭悪い動きをしてちょっぴりイラっとすることがないでもないですが、誤差みたいなものです。ようやく楽しくなってきた物語を存分に楽しみましょう。
さて、このループでも結局歴史を変えることはできず、世志常もまた命を失うのですがそれはいいです。新たなるループへの布石と思えば。しかし迎えた最終ループ。序盤はこれまでの流れを変えようとまた試行錯誤する部分にわくわくしていたのですが、だんだん風向きが変わってきます。
・・・急に妖怪大戦争&唐突に最強キャラ登場
なんだこれ
いやまぁタイムスリップ自体怪しげな術とかだったしファンタジー要素がないことはないのはわかってましたけど、、、急になんだこれ。
もうここから先は滅茶苦茶すぎて突っ込みどころがない部分探す方が難しいです。ChuSinguraも最後の方はなんか急に話のスケール変わったような気がしないでもないですが、本作はここまでのイライラもあったりするのでそれ以上の衝撃です。
伏線の一部回収もループに関するちょっとした説明もありますけど、正直どうでもいいです。それ自体が突っ込みどころ満載っていうのもありますが、もう物語に興味持てなくなっているので。。
■CG
歴史の一部をなぞられた部分とかめっちゃ熱くなりますよね。日本の歴史ものってジャンルをあまりやらないこともあって、和の要素が入った服装とか乗り物とか景色とかすごくいいです。
あと、キスシーンのCGはどの作品にもあって欲しいくらい好きなので、本作にも完備されているのが凄く嬉しいですし、さらに口と口が重なる部分が上手く描かれているのが最高でした。その部分って写実的な要素がないと難しいのか萌えゲーとかだと上手く表現できてないことが多いんですが、本作は割と上手くできていたように思いますのでおススメです。
■キャラクター
キャラクター盛りだくさんで声優さんが凄いことになっています。さらに夏野こおりさんとか沢澤砂羽とか有栖川みやびさんとか嬉しい人は多いんじゃないでしょうか。もちろんその3人ではなくとも豪華声優さんがずらりですし、各人見せ場も活躍の場も多く声優さん買いというのもありだと思います。
世志常の側近はこれFDあるんですよね?ルートも欲しいですけど、少なくともイチャイチャはするんですよね、インレさん。そう思えるくらいには楽しいキャラクター陣になっています。
本作ではシナリオが一本道というのもありますし、色恋がメインでないということもあってヒロインがそこまでフィーチャーされないんですが、それでも個人的一押しの可愛い女性キャラクターは紫都香かなぁ。やきもきする様子がすごく可愛いです。
そして平家側ですが、平教経と平宗盛は推しておきます。
教経はキャラクターと沢澤砂羽さんの相乗効果で楽しい人になっていますし、宗盛はいろいろやらかしいているんですが、どこか憎めないいい味出してます。
どちらかしか選べないとかだったら、宗盛ルートが一番面白いことになりそうなのでインレさん宗盛ルートを是非ともお願いします。
これまでの流れと全く関係ないですが、土佐坊の目の下頬?っていうのかあの口元の防具がひげに見えて仕方ない。
■エロス
ヒロイン固定で回想自体はそのヒロイン達とのシーンしかないんですが、ヒロイン以外ともちょいちょいエロいことはしています。しているんですけど、な~んか中途半端っていうか、ぶっちゃけいらないです。世志常が変なところで身持ちが固いのでエロいことされても結局手は出さないのが誰得なのかわかりませんでした。そこまでの言動で世志常自体を好きになれていないので、誠実だなぁなんて思うこともないですし、無駄に寸止めされている気分になります。
ではヒロインとのシーンはどうなのかというと、紫都香2回 楼子2回 二人一緒で1回です。う~ん、なんか特別言うことないですね。可愛いは可愛いしCGも綺麗なんですけど、あんまり印象に残りませんでした。
■ボリューム
台詞を長めに聞く感じでトータル22時間前後でした。ルート分岐などはありませんが、ChuSingura46+1 のようにループ毎でチャプター分けのようになっています。基本的に私は面白い物語であれば長く楽しみたいので、本来ボリュームがある作品は大歓迎なのですが、その半分近くがうんちく・歴史の授業垂れ流しだと流石にきついです。もしかしたらそのあたりで無意識に説明部分をクリック連打していた可能性はあります。
どうしてこうなった。
■クオリティ
まずは機能面で、だいたいあってほしい基本セットはあるようです。ボイス登録機能とマウスジェスチャーはあると嬉しい機能かもしれませんね。これだけキャラクターがいますが、音量設定は各キャラクターで可能です。やはりクオリティとして考えるならキャラクターの多さは見逃せません。キャラクターが多いことがすなわち良いというものではないかもしれませんが、多いほうができることが多いのは間違いありません。立ち絵で表現する戦闘シーンというのも賛否はありそうですが、動きがあってよいのではないでしょうか。
作品の骨子となる部分に不足はなく、キャラクターも声優さんも層が厚くて素晴らしいんですけど、やはり本作はシナリオが完全に足を引っ張ってしまった感は否めません。
キャラクター数・声優さんとその熱演、こういったゲームでは少数派の歴史もの、源平、これらの要素で惹かれてかつ長い作品に時間を掛けられる方であればお手に取ってみてください。